レコードコレクターの苦悩|サイン、シュリンクとシールド
2018-04-13
今回『新しい青の時代』アナログ盤をクラウドファンディングで販売するということになったとき、提供する商品(オファー)についての打ち合わせのときに「当然山田くんのサイン入りレコードにしたらみんな喜ぶよね!」という流れになったのですが、ちょっと常軌を逸したレコードコレクターである僕としては「もちろん!」と即答できなかった。レコードを買って一番わくわくするのはLPが包装されているビニールをカッターで(ときには爪で)スーッと開封する瞬間だということを知っているからだ。 このLPを包む薄いビニール、これがレコード好きには重要なのです。「シールド盤」という言葉がありますが、これは「sealed=封印」つまりビニールで包まれたまま開封されていないレコードということ。そして「シュリンク(シュリンク付き)」というとき、それは「shrinke(縮む、という意味)」、封は切ったけど、ビニールがジャケットを包んだままの状態を示し、すなわちとても状態がきれいだということになる。僕は新品のレコードを買ったときは極力このビニール袋を傷付けないようにします。だから二つ折り見開きジャケットなのに、まだ開いていないレコードっていうのがたくさん、ある。こういうときのために複数買いするのですね、レコードコレクターという気狂いは…。探していたレアなレコードがシールド盤で見つかったときには小躍りするし。 たとえば1970年代のシュリンク付きのレコードは、50年近くもそのぺらぺらなビニールが時を越えてそのときの空気を付帯させているということになるわけで、音楽の響きや気分にも随分影響を与えるように思うのです。しかし、LPジャケットにサインをしてもらうときにシュリンク付きだとダメなわけで、そこに葛藤があるのです。うまいことビニールを剥がして(脱がして)ふたたびそれを履かせることができれば大成功ですが、ビニールもか弱いものなのでなかなか難しいというのが現実です。レコードを包むビニールにはステッカーが貼ってあることが多く、そこには宣伝文句が書いてあったり、アートワークの一部になっていたり、いろいろです。なおさらそこまで保管したいというのがレコードコレクターなのですよね。『新しい青の時代』アナログ盤もジャケットをビニールで包み、その上にステッカーが貼られたものになる予定で、だから僕は自分のレコードでもその悩みに出会うことになります。 で、何が言いたいかというと、今回の『新しい青の時代』アナログ盤にはサインを書き入れて発送することはしません。未開封のものを皆さんの手で一度開けてもらって、ご希望があればライブ会場やどこかでサインをします。このことをご理解ください。レコードは国内プレスされますが、漆黒の円盤はどんな匂いがするでしょうか。それを皆さんで最初に味わっていただくことも『新しい青の時代』アナログ盤の楽しみです。 どうでもいいことですが、僕なんかにとってはそういうことも音楽の一部なのです。