山田稔明『新しい青の時代』限定アナログ盤

活動報告

レコードの針でこんなに変わる

2018-05-25

『新しい青の時代』アナログ盤のカッティングが完了し、テストラッカー盤を持って帰ってきて家の普段のオーディオで聴いたわけです。何日か前の話。最初の「どこへ向かうかを知らないならどの道を行っても同じこと」を聴いて感動したのは言うまでもありませんが、東洋化成のカッティングルームにはそれこそ最高峰のリスニング環境が整っているわけで、そこで聴いた印象とはやはり少し違ったのです。僕はCDを作るときもいつもマスタリング後の音についてナーバスになってしまう傾向がある(ひずんでいるんじゃないか、とか曲間が短すぎたんじゃないか、とか)。なので、今回もカッティング後にざわざわした気分になるのはある程度予想が付いたのですが、生まれて初めてのレコード作りなので神経質な方向に向かっているなあと感じました。そこでご近所の近藤研二さんに連絡して近藤さんのスタジオのターンテーブルでも音を聴かせてもらうことにしました。うちの居間よりも近藤さんのスタジオのほうがハイファイなスピーカーを使用してあるから、やっぱり山田家で聴くのと耳触りが違う!みんな違ってみんな良い。 僕が使っていたレコード針(以下カートリッジと呼びます)はSONUSというメーカーの1970年代のヴィンテージ、かなりクセがある。一方近藤さんのターンテーブルにはSHUREのM44Gという信頼性のある定番カートリッジがついていました。僕が持参した針に取り替えて聴いてもやっぱり全然音が違う。1万円くらいのカジュアルでポータブルなレコードプレイヤーはカートリッジをいろいろ取り替えたりはできないかわりに、味わいあるチープさがあって、これはこれでいいなと思いました。 翌日、僕はオルトフォンというメーカーの近未来的なフォルムのカートリッジを注文、近藤さんも乗ってきて2個セットのものを買ってふたりでシェア。このカートリッジはすごくバランスが良くて、いろんなレコードを次から次に回してみたけれど、音楽を聴くこと自体が楽しくなっていく感覚がありました。勢いに乗った僕はSHUREのM44Gまで手に入れて、今では音楽によってカートリッジを付け替えて楽しんでいるのだから、レコードっていうのは本当に奥深いものです。 カッティングエンジニアの西谷さんの言葉が忘れられません。「わたしたちエンジニアは最高のオーディオで再生したときに最高の音が出るようにカッティングします。それをポータブルのプレイヤーにレベルを合わせていたら音楽の本質が失われてしまうんです。この『新しい青の時代』も一番いい音を閉じ込めたので一番いい音で再生するまでの行程を楽しんでください」。きっと僕はあくなき探求を続けるのだろうな。興味があるならぜひ皆さんも。

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